敏感期の子どもを「待つ」~モンテッソーリ教育の視点から~

靴を履く子どもを待つ

はじめまして

モンテッソーリ教師(AMI認定)の金井さやかです。

このたび、日本タッチ育児協会の研修会でお話する機会をいただきました。ありがとうございます。

モンテッソーリ教育と出会って、もう26年が経ちます。
私が最初に勤めた保育園は、モンテッソーリ教育を取り入れた園でした。

現場で子どもたちと関わりながら、「子どもには自ら育つ力がある」というモンテッソーリ教育の深い魅力に触れてきました。

結婚・出産を経て、3人の子育てに奮闘しながら、保護者の方々が抱える葛藤や悩みにも寄り添ってきました。
14年間の現場経験を活かし、自宅でモンテッソーリ親子クラスとベビーマッサージクラスをスタート。

現在は、0歳から7歳までのお子さまが訪れる「横浜モンテッソーリ教室 ちいさいおへや」を運営し、
子どもたちの自立を育むお手伝いを続けています。

子どもを「待つ」ということ

モンテッソーリ教育の視点から

子育てや保育の現場で、こんな場面に出会うことはありませんか?

靴を履くのに時間がかかって、つい手を出したくなる

「早くして!」と声をかけたのに、子どもはのんびりマイペース

せっかくきれいに片づけた部屋を、またすぐに散らかしてしまう

忙しい日々の中、私たち大人は子どもを待つことが難しくなりがちです。
手を出せば、きっともっと早く、もっと上手にできる。

けれど、モンテッソーリ教育では「待つ」ことをとても大切にしています。

なぜなら、子どもが「自分でできた!」と感じる瞬間こそが、心と体の成長を支えるからです。

今回は、モンテッソーリ教育の視点から「待つ」という関わりについて、敏感期の考え方とともにお話しします。

モンテッソーリ教育は「運動の教育」

「モンテッソーリ教育」と聞くと、
知育玩具や集中して作業に取り組む子どもの姿を思い浮かべる方も多いかもしれません。

ですが、モンテッソーリ教育は「運動の教育」とも呼ばれています。
0〜6歳の乳幼児期は、身体を自由に動かしながら「自分の体を思い通りに動かす力」を獲得していく大切な時期です。

例えば、赤ちゃんは寝返りをし、ハイハイをし、つかまり立ちをし、歩くことを繰り返しながら、バランスや筋力を育てていきます。この過程で大人が先回りして抱っこやベビーカーに頼りすぎると、子どもが自分で試行錯誤する機会が減ってしまいます。

モンテッソーリ教育は、こうした自然な動きの中にこそ学びがあると考え、
子どものペースで動きを獲得する時間と環境を保障することを大切にしています。

「敏感期」とは?

モンテッソーリ教育には「敏感期」という考え方があります。

敏感期とは、子どもがある能力を強く伸ばそうとする限られた時期のこと。

運動の敏感期秩序の敏感期言語の敏感期感覚の敏感期、排泄の敏感期等、

子どもはある時期に、まるで磁石に吸い寄せられるように特定の活動に夢中になります。

例えば…

1歳の子どもが「自分で歩きたい!」と強く主張するのは、運動の敏感期の表れです。

2歳すぎの子どもが「いつもと同じ場所じゃないとイヤ!」と泣くのは、秩序の敏感期のサインです。

3歳前後はお話が止まらず、ずっとおしゃべりしているのは、言語の敏感期中でも「言語の爆発期」とも言います。

敏感期は一過性で、やがて自然に過ぎ去ってしまいます。
このタイミングを逃すと、同じ力を獲得するためには多くの努力が必要になってしまうこともあります。

だからこそ、敏感期を見逃さずにサポートすることが、子どもの成長を最大限に引き出す鍵になるのです。

「待つ」ことは、ただ見守ることではない

大人が子どもを待つとき、ただ黙って何もせずに立っているだけでは、十分とはいえません。

モンテッソーリ教育における「待つ」とは、
観察し、理解し、必要な環境を整えたうえで信じて見守ることです。

例えば・・・

運動の敏感期の場合

1歳半の子どもが高いところに登ろうとする姿に、つい「危ない!」と止めたくなることがあります。
けれど、この時期の子どもはバランス感覚や筋力を育てるために、登る動作を必要としています。

安全な場所を整えた上で、
「どうやったら登れるかな?」とそっと見守り、必要なら足場だけ整えてサポートする。
これが“待つ”という関わりです。

秩序の敏感期の場合

2歳の子どもが「このコップじゃなくちゃイヤ!」と泣き叫ぶことがあります。
大人にとってはわがままに見えるかもしれませんが、
子どもは「いつも通り」が崩れたことで不安になっているだけ。

こんな時は「そうだね、このコップだったね」と、できるだけこだわりを尊重する。
その経験が、子どもの心の安定につながります。


待つことで育つもの

子どもが「自分でできた!」と感じる体験は、

  • 自立心
  • 自己肯定感
  • 集中力
  • 問題解決力

    を大きく育てます。

もし大人がすべて先回りしてやってしまったら、

  • 失敗から学ぶ機会を奪う
  • 「やってもらわないとできない」という依存心が強くなる
  • 自分の力を信じられなくなる

    といった影響が出ることもあります。

待つことは時間がかかり、時にはもどかしいものです。
けれど、その「待ち時間」があるからこそ、子どもはゆっくりと、
しかし試行錯誤しながら確実に自分の力で成長していくのです。


待ったからこそ見えた成長

ある日、教室で2歳の子どもがボタンの付いたベストを着ようと頑張っていました。
何度も外してはやり直し、10分以上かけてもなかなか最後のボタンが留まりません。

横で見ていた大人が手を出そうとしたその時、
私はそっと「もう少し見ていてみよう」と声をかけました。

しばらくして、子どもは自分の力だけで最後のボタンを留め、
「できた!」と顔いっぱいの笑顔を見せてくれました。

もし途中で大人が手伝ってしまっていたら、
この「自分でできた!」という達成感も、次への挑戦意欲も生まれなかったでしょう。
この瞬間こそが、待つことの意味を教えてくれます。

待つことは愛情と信頼のかたち

モンテッソーリ教育における「待つ」とは、

子どもを信じること

発達の敏感期を理解し、環境を整えること

子どもが自分で成長できる時間を保障すること

子どもは大人が思う以上に、自分で育つ力を持っています。

その力を花開かせるために、私たちができる一番の贈り物は、焦らず、信じて、待つこと

待った先に見えるのは、子どもが自分の力で築き上げた、たくましくしなやかな成長の姿です。
その瞬間を一緒に喜べることこそ、子育てや保育の最大の喜びではないでしょうか。

研修会にむけて

今回の研修会では、「待つ」を支える3つのポイントとして、
環境・時間・サポートというキーワードを軸に、お話しいたします。

ベビーマッサージ教室やモンテッソーリ教室など、教室の先生方には勿論、
育児支援の現場にいる方にも、取り入れやすい実践的な内容です。

子育てや保育のヒントに繋がる機会になれば、嬉しく思います。

【保有資格】
・AMI国際モンテッソーリ教師ディプロマ(2+〜6歳)
・AMI国際モンテッソーリ協会0-3レベルアシスタント
・保育士/幼稚園教諭(一種)
・JABC日本ベビーチャイルド&チャイルドケア協会   認定ベビーマッサージ指導者
・おむつなし育児アドバイザー
・排便便秘アドバイザー 

【講演実績】
2025年 日本モンテッソーリ協会(学会)全国大会にて研究実践発表
『モンテッソーリ教育に基づく排泄自立支援:保育者講座と保護者支援の実践』

【保護者向けセミナー】
川崎市・横浜市・相模原市等
幼稚園、保育園様にて多数

【年間継続サポート】
社会福祉法人 コスモス福祉会様 (大曽根コスモス保育園/港北コスモス保育園) 
モンテッソーリ教育の基本理念から、子ども理解・環境構成・援助のあり方まで、
現場に即した視点で継続的な学びを支援しています。

【職員研修】
青葉区内愛和太陽幼稚園様
東京都町田市内認可クローバー保育園様
川崎市川崎区ゆりかご幼稚園様
他オンライン講座

【ベビーマッサージ
横浜市西区 平沼保育園様
横浜市 愛和太陽幼稚園様
保土ケ谷区地域子育て支援拠点「こっころ」様
川崎市川崎区 ゆりかご幼稚園様


日本タッチ育児協会主催 研修会
子どもを「待つ」ということ― モンテッソーリ教育の視点から ―」

2025年9月11日(木)9:30~11:00
講師:金井さやかさん
受講料:5,500円(税込)
※zoom開催/要予約
※アーカイブ(録画)受講可能

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