看護専門学校の受け入れ~地域子育て支援×母子保健のリアルを学ぶ場~

ベビーマッサージ教室での看護専門学校の実習受け入れ

看護専門学校ウィメンズケア実習(旧母性看護実習)の受け入れ

東京都「八王子012歳のおうち育児サポート教室」主宰の上島浩子です。

地域の赤ちゃん教室をスタートし、13年が経過しました。

私の教室では、2018年より東京高尾看護専門学校の母性看護実習(2025年度よりウィメンズケア実習に名称変更)
を受け入れています。

なぜ今、看護教育に「地域の子育てコミュニティ」が必要なのか

「赤ちゃんに触れる時にも、一人の人間として尊重し、許可を得る」

子どもを尊重した応答性のあるコミュニケーションは、
親子の絆をより深め、赤ちゃんが「自分は大切な存在だ」と感じ、自己肯定感を育む第一歩です。

近年、母子保健の現場では産後うつや虐待の予防、愛着形成(アタッチメント)の支援が重要な課題となっています。その解決には、「親子が安心して過ごせる地域の居場所づくり」と、「親子の絆を育むふれあいの専門性」、この両輪が求められています。

また、「産前産後ケアガイドライン」においても、看護師等専門職が地域で果たすべき役割として、
母子の孤立を防ぎ、地域資源と連携しながら継続的に支援することの重要性が明記されています。

当教室では学生に、「地域での母子支援の実際」と「親子の愛着形成を支えるふれあいのスキル」を伝えています。

実習プログラムの全体像

実習前ガイダンス|ふれあいの基礎を体感する

1. なぜ今、地域でふれあいを伝える必要があるのか

  • 核家族化・少子化による孤独な育児
  • 親子のふれあいを見たり教わる機会の減少
  • 育児不安、虐待や不適切保育などの社会課題
  • 地域での居場所が持つ予防的支援の力

2. 許可を得て触れること | 接触のルール

  • 赤ちゃんも一人の人間として尊重する姿勢
  • 声をかけ、反応を受け取り、同意を得てから触れる
  • オキシトシンの作用と愛着形成

3. 相互タッチワーク

学生同士でお互いに「タッチしてもいいですか?」と許可を得て、オイルを使用して相手の肘から手首までタッチするワークを行います。

このワークを通じて、学生たちは「触れられる側の気持ち」を体感し、「許可を得ることの意味」を身体で理解します。毎年、その様子から学生同士がお互いに信頼していることが伝わってきます。

教室実習|実際の親子との関わりから学ぶ

実習当日、学生たちはベビーマッサージ教室に参加する母親と赤ちゃんと実際に関わります。

学生がよく母親に質問すること

「どのようにしてこの教室を知りましたか?」
「通うことで何か変化はありましたか?」

母親たちからの答え

子どもとの関係の変化はもちろんのこと、多くの母親が口にするのは次のような言葉です。

「この日を楽しみに、自分のために来ています」
「離乳食や発達の気になることを聞ける場があるだけで、不安が全然違います」
「他の赤ちゃんの様子を見られることも貴重な場です」


この言葉に、学生たちは「母親にとっての居場所の重要性」「地域コミュニティが持つ支援の力」を実感しています。

また、ベビーマッサージを通じて、「母子の表情の変化」「母親が赤ちゃんに触れる手の温もり」「赤ちゃんが母親の手に身を委ねる姿」など、実際に愛着形成が育まれていく瞬間を目の当たりにします。

実習後には、「ふれあい遊びやベビーマッサージを通して親子がリラックスし、柔らかい表情に変わっていくことが印象的だった」という感想が多く聞かれます。

学生たちの学びと気づき

実習担当教員からのメッセージ

実習を担当する看護専門学校の先生からはこのようなご評価をいただいています。

「学生達は少人数で安心した空間で、母親たちが自然に悩みを相談しやすい場があることの意味や、母親同士が助け合える機会を作ることの大切さを学ぶことができました。」

「赤ちゃんに触れる時にも相手に説明をして了承を得ることが、”自分を大切にされている”と感じることができ、乳幼児の自己肯定感を育むことに繋がることを学んでいました。先生の実習で母子相互作用や信頼関係の構築の実際を見学できることが、母子支援の実際を学ぶ上での土台となっていることを感じております。」

私自身が気づかされること

学生たちの「母子の表情の変化を感じた」という感想に、

日々の教室では見慣れた光景が、
初めて見る人にとっては「こんなに変わるんだ!」という驚きになる と気付かされました。

この視点を忘れずに、地域での居場所づくりと、ふれあいの力を伝え続けたいと改めて感じます。

コロナ禍での挑戦|2020年、オンライン実習への切り替え

2020年、コロナ禍により対面実習が困難になった際には、Zoomを活用したオンライン実習に切り替えました。

教室に通う母親と赤ちゃんにご協力いただき、画面越しではありましたが、

  • ベビーマッサージの実際の様子を見る
  • オンラインであってもコミュニティがあることの大切さ

など、「母子支援の実際」「地域コミュニティの力」を学ぶ機会を途切れさせることなく継続できたことは、
大きな意味がありました。

なぜ当教室が看護実習のフィールドとして選ばれているのか

当教室は保育士が運営しています。

2018年より東京高尾看護専門学校の実習を受け入れていますが、
この実習フィールドの提供そのものが、多職種連携の実践になっているのだと、改めて気づかされています。

産前産後ケアガイドラインが示す多職種連携

産前産後サポート事業・産後ケア事業のガイドラインには、
事業に携わる専門職として、「助産師、保健師、看護師、管理栄養士、保育士等」が明記されています。

また、様々な専門職がそれぞれの立場から母子を支え、連携していくことの重要性が示されています。

看護師と保育士、それぞれの視点から

看護師は医療的視点から母子を支え、
保育士は赤ちゃんの発達やコミュニケーションの観点から親子の関係性を支えます。

当教室で看護学生が学ぶことは、地域資源との連携のあり方を実感してもらう機会になっているのかもしれません。

私を含め、日本タッチ育児協会に所属するタッチ育児アドバイザーは、親子のふれあいを「スキル」として地域に届ける専門家です。

ベビーマッサージを通して、

人権尊重・コミュニケーション理論に基づいた「接触のルール」を伝える活動
親子が安心して過ごせる地域での居場所づくり

この両輪で、親子と地域全体を支えています。

実習では、教科書や講義だけでは学べない、リアルな親子の姿と、それを支える地域コミュニティのあり方を伝えています。少人数で安心できる空間づくりが、学生たちの深い学びを生み出しています。

当教室での実習が、専門職の枠を超えた連携の可能性を感じてもらう場になればと思っています。

保育・看護等養成校の実習・見学を受け入れています

日本タッチ育児協会では、看護学校、保育士養成校などの実習・見学を積極的に受け入れています。

次のような機会にお役立てください

  • 母性看護実習・ウィメンズケア実習
  • 子育て支援実習
  • 養成校での講義・ガイダンス
  • 育児支援者向け研修プログラム

学んでいただけること

  • 地域での母子支援の実際
  • 親子の愛着形成(アタッチメント)を支えるふれあいの専門性
  • 母親同士がつながる場づくりの意義
  • 「接触のルール®」に基づいた人権尊重のコミュニケーション
  • 産前産後ケアにおける専門職との連携

カリキュラムに応じた柔軟な対応が可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。

おわりに|未来の母子保健を支える人たちへ

「丁寧に触れられて育つ子は、それだけで幸せ」

これは私たちの理念であり、看護学生・保育学生の皆さんと共有したい思いです。

実習を通じて学生たちが感じた「地域コミュニティの力」「ふれあいが育む愛着形成」「母子の表情の変化」
これらの体験が、未来の母子保健を支える土台になることを願っています。

そして、医療・保育・地域が連携し、すべての親子が「安心して過ごせる居場所」と「丁寧にふれあえる環境」を手にできる社会を、一緒につくっていきたいと思います。

接触のルール®とは|すべての子どもに尊重されるふれあいを

タッチ育児アドバイザー養成講座